実家をラボにする#1菓子製造業許可を受ける施設をつくるには

東京都にある実家の1階部分を、ラボに改装していく話を書いていきたいと思います。

私の実家は祖父母との二世帯住宅でしたが近年二人とも他界し、祖父母の住まいはそのままになっていました。

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祖父母の家。
リビング、キッチン、寝室と祖父の部屋があります。

同居していた祖父母の娘、つまり私の母は、かれこれ30年近く、菓子・パン研究家として活動しています。
主には雑誌などへレシピを掲載したり、単行本を出版したりしています。

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小黒きみえ 最近instagramを始めました。

「作り方を教えるのもいいけれど、自分が作ったものを誰かに直接食べてもらいたい」と母はたびたび言っていました。
母は仕事以外でも毎日のように菓子やパンを作っています。
しかしどれだけ作っても、自宅で作ったものを販売することはできません。
食品衛生法上、販売するものは菓子製造業許可を受けた施設で作られる必要があります。
営業許可は住居と分かれていることが絶対的な条件であり、自宅をメインキッチンにしてる母は、長年その想いを諦めてきたそうです。

ちょうど世の中はコロナ禍の真っただ中。

感染拡大防止のために移動が制限され、デリバリーや通販の需要が急速に高まりました。
実際の店舗にわざわざ足を運んで商品を選んで買う楽しみもあるけれど、距離や時間に関係なく商品が手に入る便利さに、これからの世の中のニーズがシフトしていくかもしれない。
通販に求める価値観が多様化していくならば、やり方次第では母が作る菓子も商品化のチャンスがあるのではないか、と思いました。
実店舗を構えるのは立地的に不利な実家ですが、菓子製造業許可を受けられる製造場所=ラボとしてならば十分に使えるスペースがある。
そう考え、「実家をラボにする」計画を私から提案しました。

母の仕事を応援していた祖母は、かねてより「あなたの仕事に私たちの家を使ってね」と言っていたそうです。
亡き祖母の後押しもあり、祖父母の家を菓子作りができるラボへと改装することになりました。

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私が経営するバーの内装を担当してくれた猪股さんに、ラボの改装もお願いすることにしました。
猪股さんは、多くの飲食店を造っている方。
このような時期にも関わらず、快く引き受けてくださいました。

1度目の下見は、ラボとして改装が可能な状態なのかを大工さんと一緒にチェック。
写真は2度目の下見。
水道屋さんと一緒に配管のチェックなどをして、部屋ごとの使用用途を決めていきます。

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リビング。
メインの作業場として、オーブン、作業台、冷蔵冷凍庫を配置することにします。
母のたっての希望で、今回導入する予定のオーブンが「ベイキ―プロ
これを導入するためには
・電源が三相200Vのため、電力会社に申請が必要
・高熱を発するため、オーブン上に換気扇と、強力なエアコンの新設が必要

高価なオーブンなので「どうしてもこれじゃなきゃだめ?」と聞いたところ、「人生であと1台くらいしかオーブンを買わないと考えたら、好きなものをつかってみたい」とのこと。
そうまで言われたら仕方ない、このオーブンの設置を最重要ポイントとして考えることにしました。
オーブンが大きく、窓にかかるため窓をふさぐこと、また冷蔵冷凍庫を置いた場合の重量の負担もかなりあるので、機材設置場所の床を補強することになりました。

キッチンです。

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菓子製造業許可の取得には、洗浄設備とは別に従業員専用手洗い設備が必要です。
いまのシステムキッチンは取り払い、シンク・手洗い場とガスコンロを新設することになりました。
レンジフードも壊れていたそうなので、ついでに付け替えます。

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寝室です。

菓子製造業の規定には「施設は、製造、発酵、加工及び包装を行う場所、製品置き場その他の必要な設備を設け、作業区分に応じて区画すること。また、作業場外に原料倉庫を設けること」とあります。
この部屋は、加工及び包装を行う場所、製品置き場として使用します。
エアコンが古いので、リビングのものをこちらに移設することになりました。

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祖父の部屋です。

上記規定に基づき、ここを原料倉庫として使用します。

だいたいの部屋の用途分けは決まりましたが、分からない点が。
リビング入り口および祖父の部屋の既設の木製引き戸はそのまま使用可能か?
施設の営業許可基準は管轄の保健所によってだいぶ差があるため、一度簡単な図面を書いてもらい、それを持って問い合わせに行くことになりました。